発表会の当日は、前日までの雨がやみ朝から薄日が差す天気になり、着物で楽屋入りすることもあって
明るい気分で会場に向かった。
楽屋では、まずお家元の挨拶があり、その後円陣を組み気合の掛け声。
声が揃いやる気にスイッチが入った。
そして、出演順に準備が始まった。最初が化粧、次に衣装そして出演間近のかつら着け。
慣れないかつらの重みを我慢しながら舞台のそでに向かい、出番を待った。
着物も普段と違い窮屈に締め付けられ練習通りに動けるか不安で、緊張しながら出番を待っていた。
近くにいたお家元にかつらが重いと言うと、「すぐ慣れてくるから」と励ましていただいた。
そして、踊りの始めと終わりの位置を指示していただき、位置に着いた。
とうとう拍子木が打たれ、音楽とともに幕が上がった。
客席の気配を感じながら、お辞儀の姿勢から顔を上げ踊り始めた。
やはり不安通りかつらの重さと着物の腰回りの締め付けで思うように腰を入れられず袖を振るところでは
きれいに振れなかった。一番苦手な膝を曲げ腰を下し一周するところは、いつもより足が重くやっと回れた。そして、最後の扇の扱いでは、袖に触れてしまいきれいに扱えなかった。
最後の「きまり」でお辞儀をし幕が下りた。
踊りながら「あっ」と思うところが色いろあったが、大きな失敗がなく終わることができホッとして楽屋に
戻った。
初舞台ということで、全てが初めてのことばかりで指示された通りに動き、舞台に上がったが、
出演前の時間に衣装やかつらに慣れ練習する時間が取れるのではないかと予想していた自分が甘かった。
本会の舞台を踏むには、きつい衣装や重いかつらにいかに早く慣れるかが大切なことだと感じた。
この経験を次回に生かしたいと思う。
また、発表会を見にきてくださった方々から様々な感想をいただくことができた。
中でも嬉しかったのが、「母の介護で疲れていたが、衣装と背景が良くマッチしていて美しく、別世界に
触れたようで、見に来て本当に良かった。次は、主人も一緒に連れてきます。」
「日本舞踊を初めて見たが、最初は言葉が聞きなれず分からなかったが、だんだん分かってきて興味がわいて
きた。日本舞踊もいいもんだなと思った。」など。
それ以外でも最初から最後までずっと見て楽しんでくださった方や日本文化に触れてもらおうと留学生を
連れてきてくださった方等々。それぞれに本会を楽しんでくださったことがとても嬉しかった。
自分の踊りが思うようにできず落ち込んでいたが、いろいろな方の感想を聞き、日本舞踊には人の心に響く力
があるのだと気づかされた。
それは一人一人にあった演目選びから始まり、衣装、背景、扇子等の小道具の一つ一つまで全てを演出された
お家元の演出力とどの人も必ず言っていた。
「お家元の踊りは、さすが素晴らしい。」という言葉が証明しているように、お家元の総合力によって
見る人に日本舞踊の素晴らしさを伝えることができたのだと思う。
そして、その力によって見る人の心に潤いを与えることができたのではないかと思う。
このような日本舞踊の力に気づかされたことは、私自身これから稽古に向かう大きな励みとなっている。
C・T
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